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南カリフォルニアで学ぶ子供たちの教育カウンセリングで
よく聞かれる質問を、まとめてみました。
月刊「Sweet Orange」紙上にて連載中の「教育カウンセリング」より抜粋です。



ご質問は miyako@ikuei.com までお気軽に!
目次

1. TOEFLって何ですか?
a. TOEFLとは
b.小中学生にとってのTOEFL
c.iBT と PBT

2. 日本語力をつけさせるために、家で何をすれば良いでしょうか?
a. 小さなお子さんに読む愉しみを
b. 小学校高学年以上のお子さんの読書の習慣付けに大切な事
c. 音読練習の大切さ

3. 数学・算数の勉強の仕方
a. なぜ勉強させるのか
b. 脳の発達の鍵はお母さん(1)
c. 脳の発達の鍵はお母さん(2)
d. 数学の勉強の仕方(1)
e. 数学の勉強の仕方(2)

4. 本物を見せる大切さ
a. 本物を見せるとは
b. 本物を見るときの心構え

5. 英語力を伸ばすには
a. 英語力を伸ばすには
b. 英語エッセイを書けるようにするには (1)文法力
c. 英語エッセイを書けるようにするには (2)語彙力
d. 英語エッセイを書けるようにするには (3)論理的思考力と表現力

6. 理科・数学の勉強
a. 日本語で理科・数学を勉強する意味
b.リバネス実験教室

7. 帰国時期を決めるのに大切なこと
a. Early Graduation
b. 高校入試を目指しての帰国
c. 高1 の2 学期編入を目指しての帰国
d. 中1 または中2 の2 学期編入

8. 大学入試向け統一試験 SATについて
a. SATとは
b. SAT Subject Test と PSATについて

9. ボランティアをしよう
a. ファンドレイズウォーク


10. 失敗から学ぶ
a. 今、間違えたことを喜ぼう
b.ノートをとる大切さ
c.うっかりミスをなくすには
d.失敗して青ざめている子どもへの接し方
e.子どもの失敗を受け止めよう
1. TOEFLって何ですか?
a. TOEFLとは

Q1:TOEFLって何ですか?

 TOEFLは、Test Of English as a Foreign Language の略です 。米国の大学以上の教育施設で就学を希望する外国人留学生の 英語力証明試験としてETSが正式実施しています。
 現在は、Listening/ Grammar / Reading のPBT(Paper Based TOEFL)、2005年秋までアメリカ国内公式TOEFLとしておこなわれていた Listening / Grammar / Reading /WritingのCBT (Computer Based TOEFL)、そして2005年秋からアメリカで正式試験と して始まった Listening / Speaking / Writing/ Reading のiBT (Internet Based TOEFL)の3種類のTOEFLが存在しています。現在はアメリカ国内ではiBTのみ正式試験として受験可能になっています。

Q2:TOEFLが必要なのはどんな場合ですか?

1)高校生以上の場合
 a)米国大学での就学を希望して海外留学生枠で出願する場合 は必修です。
 b)アメリカの高校卒業証書を持って米国大学に出願する場合 出願時スコア提出義務はありませんが、米国大学で単位とな   る レベルの英語クラスを履修できるかどうかの振り分けテストで合格するためにはPBTOEFL550以上の英語力が必要に   なります。
 c)日本の大学を帰国子女枠受験する場合TOEFLスコアの提出を義務付ける大学は多くあります。又、TOEFLスコア提出義   務の ない大学でもTOEFLスコアでどれくらいの英語力が有るかで合格圏内にいるかどうかを検討する事ができます。

つまり、アメリカで学ぶ高校生には日米いずれの大学に進学する場合でも自分の英語力をTOEFLスコアで把握しておく事が重要ということですね。

                                                    
b. 小中学生にとってのTOEFL

Q1:小・中学生にTOEFLが必要なのはどんな場合ですか?

 a)帰国子女枠入試において、TOEFLスコアを重要参考資料にす る中学・高校があります。特に熱心に帰国子女受け入れを行う 学校にその傾向が強いので、入試・編入受験の可能性がある場 合はスコアを出しておくことが重要になります。
 b)米国でも私立全寮制高校の中にはFビザ申請をする場合に TOEFLスコア提出が義務付けられる場合があります。 日本 国内でも英語力証明としてのTOEFLの認知度は随分と高ま っています。「かつてTOEFLで〜〜点取る英語力があった」ということはたとえ日本に帰国して英語力が落ちても勉強次第で そのレベルまで持ち直す可能性の十分ある人材と見られます。小学4年生以上であれば、米国滞在中に一度は受けておくこと は有効です。

Q2:小学生/中学生にTOEFLを受験させるのはまだ早すぎますか?

 米国滞在年数が4年以上の小学高学年であれば、早過ぎるとい うことはありません。TOEFL自体は本来大学の講義を受講可能な英語力 かどうかを判断するためのテストのため、ListeningやReading の試験内容は「大学の外国人学生向けオリエンテーション」 「歴史、天文学、心理学等の大学の基礎講座」と言った設定です ので、特にReadingにおいて小学生には若干難解な語彙も含まれ ますが、英語のレベルとしては現地校8年生の教科書レベルの 文章と考えて良いでしょう。

Q3 小・中学生がTOEFLを受験する場合はETS公式テストである iBTでなければいけませんか?

 日本の小・中・高等学校の帰国子女枠入学試験/編入試験に 英語力証明として提出する場合は、同志社国際高等学校の特別自己推薦入試のように、学校側が公式テストのスコア提出を 義務づけない限りは、iBTである必要は有りません。 育英セミナーで3か月ごとに行われているTEOFL特別試験は ETSからPBTを取寄せて行っています。この特別試験受験後に ETSから出される成績表は今までにほとんどの日本の 小・中・高等学校の受験/編入試験において英語力参考資料と して認めて頂いています。受験料も公式iBTの約1/4の値段です。 ただ、3か月に一度しか試験は行われませんので、計画立てて ご利用下さい。

                                                    
c. iBT と PBT

Q1 PBTとiBTの違いはなんですか?

iBTは05年9月からスタートした方式でSpeaking Writing Reading Listening の4セクションの試験、
PBTはListening Grammar Reading の3セクションの試験です。
iBTの場合、Speakingは、「コンピューター画面に出る英文を読む時間が数分与えられ、その後その内容に関連したレクチャーを聞き、それらの要約を英語で1分以内にまとめて話す」、 「会話や講義を聞き取った上で要約し話す」、「短い課題タイトルを見せられてから15秒考えて、自分の考えを45秒以内にまとめて話す」などといった、読む、聞く力を融合した上で瞬時に口頭発表する力を見られる内容となっています。受験者の傾向としては、このSpeakingでの得点が難しく、PBTで520以上610未満の得点ができる英語力の生徒では iBTよりPBTのほうが高い得点となる場合が多く見られます。

Q2 iBTでないと、大学受験で公式TOEFL扱いにならないと聞いたのですが。

05年9月にiBTがスタートした時点でETSは「今後のアメリカ国内実施の公式TOEFLはiBTのみとする」と発表していましたが、この方式では受験者一人一人がコンピューターを利用する必要がありSpeaking 試験の記録も取れる試験会場の確保が進まなかったため、受験希望者数が大幅に受付可能数を上回ることになりました。
その対応策としてETSは、06年4月に突然HP上でOfficial Paper Based TOEFLを翌5月に実施すると発表しました。
さらにETSは06年夏に再び07年春までのPBTOEFLスケジュールをHP上で発表。
現在アメリカ国内でETSが直接実施する公式TOEFLはiBTとPBTが混在しています。
日本の大学へのスコア提出は公式スコアであることが求められるケースがありますがPBTでなければならない、
iBTでなければならない、といった指定があるケースは今までありません。

Q3 申し込み方法を教えてください。

LA会場のPBTを申込みする場合を例にして以下記載します。
公式ホームページ  www.toefl.orgを開いて、Registar for the testをクリックしCountry をUnited States of America で指定して、City をLA(PBT)を選択すると出てきたページの下のRegister On Line をクリック、出てきた画面でもう一度Register on line をクリック、出てきた画面の下の Begin Registration をクリック、TOEFLを選んで、Search by test center をクリックします。もう一度Locations でUnited States of Americaを選んでSelect a CityでLA(PBT)を選ぶと(満席で申し込み不可とならない限りは)January のみ選べるので、それを選んでReserve a seatをクリック、そこからは、必要な個人情報を入力し、クレジットカード番号を使って支払い手続きをし、最後に出てきたConformation Numberの書かれたページを申込み証として必ず印刷したら、申し込み終了です。試験終了までConformation Number を決して紛失しないよう大切に保管してください。

Q4 いつごろ申込みをしたら良いでしょう?

PBTは非常に早い時期に満席になります。08年6月に高校を卒業して帰国子女枠大学受験を目指しているのであれば今から自分の実力とスケジュールにあわせて08年5月分までの申込みをしたほうが無難です。また、07年6月現在10年生のみなさんも、11年生の終了直前に当たる08年5月分を、今から申込みをすることを強くお薦めします。

                                                            

2. 日本語力をつけさせるために、家で何をすれば良いでしょうか? 
a. 小さなお子さんに読む愉しみを

 日本語力と言っても、読む力、聞いて理解する力、話す力 、書く力と多角的です。またお子さんの年令や滞米年数によっても取り組みは変わっ て来ます。 まずは、小さなお子さんに読む愉しみを知ってもらうため にご家庭でできることについてお話します。

 「本を読む事は楽しい事」と心からお子さんが思えるよう にしてあげるには、小さ いころからの「読みきかせ」はとても大切です。

*小さなお子さんに絵本を読んであげる時は、声に強弱をつ けて、楽しい場面では楽しそうに、悲しい場面では悲しそうに、子供の想像力を刺激 するように読んであげましょう。

*描かれている絵の隅々にも何が描かれているか、子供と一 緒に心から楽しみましょ う。「〜〜〜がこのページにいるよ、どこかな?、、、見つ かったあ!!」お子さん の笑顔に笑顔で応えて、感情を共有する楽しさ、コミュニケ ーションの楽しさ、そして本を読む事の楽しさを体験させてあげましょう。

*何度も繰り返し読んであげる「我が家の定番絵本」の読み きかせでは、わざと間違って読んであげるのも、また一興。赤ずきんちゃんの本を 読みながら狼のでてくる所で、「するときつねが」と読んでみたり、「そこで、あお ずきんちゃんは」と読んでみたり。「ママ、間違えてるよ」「あらら、間違えちゃった、えへへ 」というコミュニケーションと、子供が本の内容を理解しているかどうかのチェッ ク機能の一石二鳥です。ただし、やりすぎると子供が怒る事も有りますので、ほどほ どに。

*絵本選びのちょっとした注意点
 その1:はっきりした色づかいの絵本や、言葉に楽しいリズ ムのある絵本は、小さな子供の興味を引き付けやすいので、何 度も子供が読みたがる お気に入りの本になります。
 その2:子供に読んであげる前に、バイオレンス(暴力描写 )の無い物か、教えたくない宗教の含まれていないものか、あら かじめ絵本の内容を 確かめておきましょう。
 その3:子供が自分で絵本を選ぶとテレビで良く見るパワー レンジャーなどのキャラクター物に偏りがちです。子供の自らの想像力を刺激するよ うな本選びを心掛けましょう。

 小学校に入ると「もう自分で読みなさい」となりがちです が、子供は読みきかせを してもらうことで、お母さんと一緒に、楽しく本を読む時間 を共有したいのです。子供の気持ちを大切にしてあげましょう。また言葉の意味が分 かっているかどうかをお母さんが読みきかせを通して確認する事も重要です。
 妹や弟 に本を読みきかせてあげようとする事は、本人の読む力を高めます。「本を読んであ げて偉いね、おにいちゃん!」と必ず褒めて、もっと声を出して読もうと言う気持ち にさせてあげて下さい ね。
                                                               
b. 小学校高学年以上のお子さんの読書の習慣付けに大切な事

 小学校高学年以上のお子さんの場合、ただ「本を読みなさい」と言うだけでは、なかなかうまくいきません。
※お子さんの能力や興味に見合った本を選ぶ事、
※選んだ本を 押し付けるのでは無く、目に付く所に置いておいてあげる事、
※もし本人が読み始めておもしろがる様子なら、さらに関連したシリーズを一緒に買いに行ったり
 図書館に一緒に探しに行ったり、読んだ本の内容について本人が話すのをじっくり聞いてあげたり、、、、
読んだかどうかを監視するのでは無く、読む事をあらゆる方法で御両親が 一緒に楽しみましょう。

 本人が読みたがる本が大人から見るとつまらない本に見える場合もありますが、読書のスピードをつけるためには、そう言う本も有効です。「そんな本を読むよりこっちを読みなさい」と本人の望む読書を禁止するのでは無く、年 令に相応しい読書に辿り着くまで黙って見守ってあげましょう。

 さらに良いのは、家族揃って15分読書の時間を毎日持つ事です。毎朝朝食前に、あるいは、毎晩夕食後のお片付けを家族全員で協力して終えたら、食卓の周りでお茶を飲みながらそれぞれが読みたい本を15分読む。家族揃って、という所が大切です。子供一人ではなかなか続けられない事も、家族全員が揃って、となると自然に読書の習慣付けができます。日本でも朝の15分読書運動が行われていますね。高校や中学で朝の15分読書をクラス全員揃って行う事で、教室内の雰囲気が非常に良くなったという例も報告されています。読書の時間を共有する事で、心のつながりが自然にできるようです。お父さんやお母さんと読書量を競争する、と言うのも子供が楽しんで読書するきっかけになります。表を作って競争すると、子供は燃えますよ。

 そして、なによりも、褒めてあげましょう。「そんなに読んだの?すごいねえ!」 「この難しい本を読んだの?えらいねえ!」子供を褒める事はなかなか難しいかもしれませんが、お父さんお母さんの「すごいね!」がどんなに子供を幸せな気持ちにさせるかやる気にさせるか、、、、計りしれない程です。

                                                                 
c. 音読練習の大切さ

Q1:アメリカでの生活が長くなってきたので、学年相当の国語力がありません。
こちらで学ぶ小学生高学年〜中学生の子供の日本語力を付けさせるためにどうしたら良いですか?

A:できるだけリラックスした雰囲気で、毎日、音読を10分、大人が横について聞いてあげてください。
読めない漢字が出てきたら、読み方を教えてあげてください。読めなかった漢字には、
できるだけ子供が自分で振り仮名を振れるように、音読のための本は購入してください。
どんなに簡単な漢字が読めない場合でも何度も同じ漢字でつまずくときでも、
けっして「こんな漢字も読めないの?」「さっき教えたでしょ」と言わないこと。読み終わったら必ず笑顔で褒めること。
毎日するということは、実は一番難しいことですから。

Q2:何か良い国語問題集に取り組ませるのが良いのではないですか?

A:国語の基礎は音読です。音読をおろそかにして、国語問題だけに取り組もうとしても、ピアノで言えば、
基本のスケールの練習を全くせずに難解な曲の練習にいきなり入ろうとするようなもの、
テニスで言えば、体力づくりのランニングも素振りも全くせずにいきなり試合をしようとするようなものです。
アメリカ生活の長い子供にとって、日本語の勉強において一番手ごわいのが漢字を書くことと読むことです。
日本語力が衰えてきている場合、まず強化するべきは、漢字を読めるようにすること。
漢字の読みは、漢字単独で学ぶことも大切ですが、それ以上に、文章の中で練習することが一番効果的です。
難しすぎないレベルの文章で、毎日10分、日本語を声を出して読むことで、漢字の読みに慣れていくことが大切です。

Q3:音読にはどんな本を読ませれば良いのでしょう?

A:本人が読んでみたいと言うなら、どんな本でもかまいません。
子供が選ぶ本を見て(その本を選ぶのはあまりにも幼いのでは・・・)と思ったとしても、口出しは禁物。
慣れていけば自然に難しいレベルの本にも手を出すようになり始めます。
最初から高望みしてそれに応えられない子供が音読をいやになってしまうのは一番避けたい状況。
簡単に見えるレベルから、地道に継続して音読練習し、力を付けていくことが一番大切です。

Q4:子供がどんな本を選んでよいか全く分からないというのです。何か本のお薦めがありますか?

A:楽しみながら読める本であることが大切です。私がよくお薦めするのは黒柳徹子著「窓際のトットちゃん」
ローラ=インガルス=ワイルダー著 大草原の小さな家シリーズヒュー=ロフティング著井伏鱒二訳 
ドリトル先生シリーズ乙武洋匡著「五体不満足」さくらももこ著「ももこの世界あっちこっちめぐり」
大平光代著「だから、あなたも生きぬいて」宮沢賢治の本 各種星新一の本 各種池澤夏樹著「南の島のティオ」
吉本ばなな著「つぐみ」椎名誠著「岳物語」

お薦めするポイントは、小学校高学年でも読める範囲の語彙で書かれているもの、
短い話の集合で本となっているため読みたいところから読んだとしても楽しめるもの、
できるだけカリフォルニアでも古本屋などで手頃な値段で手に入りやすいかつてベストセラーとなった本、
あるいは、昔からの子供の本として定番の名作といったところです。
他に、最近、小中学生の子供たちから「先生面白いから読んで見て」と薦められたものに、
島田洋七著「佐賀のがばいばあちゃん」、あさのあつこ著「バッテリー」などがあります。
まだ私自身が入手できず読めていませんが、子供が薦めてくれる本は本当に読み応えのある本の場合が多いので、
みなさんにも情報のおすそ分けを。

                                                           
3. 数学・算数の勉強の仕方 
 

a. なぜ勉強させるのか

●勉強とは何でしょう?

 私は勉強とは「子供の脳を育てる事」だと思います。脳の前頭葉の発達を促す事が勉強なのです。
 では脳の前頭葉はどうすれば育つのか?これはその逆の「どうすれば育たないか」を考えるとわかりやすいですね。脳を育てないやり方とは、刺激をしない事。脳に刺激を与えないと、意欲が生まれなくなります。 
 ロボトミー手術と言う言葉を聞いた事がありますか?特にアメリカで第二次世界大戦前後に統合失調症患者に対して盛んに行われた、前頭前野を取り除いてしまう手術のことです。この手術が行われると感情が無くなってしまうので、キレルことが無くなりおとなしくなります。そのかわり意欲が全く無くなってしまい、外界に関して無関心になります。 
 老人が「ぼける」と言う状態も前頭前野が働かなくなる事です。最近はこの認知症の脳の研究が進んで一度発症しても前頭前野を刺激する事で症状が改善する事が解明されて来ました。この刺激として音読や単純な計算が非常に効果が高い事が証明されつつあり、日本では老人介護の現場でも積極的に取り入れられるようになりました。

●脳を育てるには

 では、脳を育てるには、どうすることが大切なのでしょう。
 まず第一に、子供である間に、脳神経であるニューロンのネットワークを脳内で張り巡らせる事、第二に大人になってもこのニューロンの脳内ネットワークを退化させない事です。
 脳を刺激しなければニューロンは発達せず退化して行きます。刺激をしないとは受け身の姿勢でい続ける事です。
 ところで、子供の生活において、刺激をしない、つまり受け身の姿勢をつくるものは何でしょうか? 受け身の姿勢を作るものナンバーワンはご推察の通りテレビ。その次がテレビゲームです。
 「え?でも先生、子供はテレビゲームですごい反射力を発揮していますよ」とおっしゃる方もいます。しかしその場その場の反射だけでは前頭前野は働かないのです。
 将棋は先の先まで考えますから前頭前野が発達します。けれどテレビゲームにおけるロールプレイングゲームでは次の次までを考える事はありません。あくまで受け身の状態なのです。
  テレビとテレビゲーム、この二つを完全に子供から取り上げるのは、現代社会においては無理ですよね。ただし、見せ過ぎない、やらせ過ぎないための約束事は決められるはずです。ダラダラといつまでもテレビを見ている、ゲームをしている、という状態を改善しましょう。
 テレビは見る番組、見る時間を決めて、つけっぱなしにしない。ゲームもする曜日とする時間の長さをきちんと決めてその時間内で楽しみ、時間が終了したら、パッと切り替えてやるべき事に取り組む。これが大切です。


                                                      
b. 脳の発達の鍵はお母さん(1)  

 子供の脳のニューロンの発達が一番大きいのはお母さんと楽しく話をしているときなのです。
 特にお母さんに褒めてもらっている時の子供の脳のニューロンの発達は凄い。お母さんが褒めることは子供にとって大きな意欲になり子供は次の成功に向けて努力し始めます。
 できたときにきちんと褒めてあげないと「やったのに褒めてもらえなかった」と子供は意欲を無くしますし、できなかったのに「次にできるようになろうね」という声かけが無ければ、子供は「やってもやらなくてもどっちでも良いのだ」とやはり意欲を無くします。
 褒めてもらうことによって子供は「お母さんはちゃんと自分の事を見ている」と安心し、自信につながります。これは高校生であっても男女に関わらずそうなのです。 

 逆に子供に「どうしてできないの!」と怒ってストレスを与えすぎるのはよくありません。ストレスをかけすぎると萎縮した子供の脳内では抑制がかかって刺激を処理できなくなります。
 「できない!」と怒るのではなく、できた時におもいっきり褒めてあげるのが、脳の発達には非常に重要なのです。
 ただし、褒めると言ってもご褒美に物を与えるのは脳の発達においては動物の餌付けと同じ条件反射になってしまい前頭前野の発達にはつながらない場合が出てくるので、控えたほうが良いでしょう。 
 ニューロンの発達の妨げになるものは不平、不満、悲観、あきらめといった感情です。子供を叱らなければならない時には、こういう感情を子供に持たせないよう、感情に駆られて怒らないこと、つまり冷静に、理屈をきちんと説明して、本人に考えさせるように諭すことが大切です。
 日本人は右脳に感情も理論も入っていると言われ、感情に駆られずに叱る事はとても難しいかもしれません。「言わなくてもわかるでしょう!」と子供を怒るのは、まさしく日本人的な怒り方なのです。 

 また子供を悲観的な心持ちにするような否定的なことはお母さんは子供に向かって絶対言ってはいけません。子供に向かって、「あんたは算数ができないね」 と言ってはいけないのです。子供はできないのではありません。練習量が足りないだけなのです。少しでも精神的負担の少ない方法で練習量を増やしてあげるよう工夫をするのはお母さんの役目なのです。
 「できないことは悪いことではない」 とできないことに落ち込んでいる子供を励ましてあげましょう。「どの部分ができないのか、できない部分が今はっきりして良かったね。次にできるように練習したらいいよね。」と今回の失敗を良い方向に変えてあげることが大切なのです。子供の失敗を成功に変えてあげるのはお母さんの役目なのです。
 できなかったら、なぜできなかったのかを冷静に考えて、今回の失敗の結果は過ぎたこと、と切り替える。その代わりに今度から同じ失敗をしないために具体的に何をすればよいのかを、一緒に考えて書き出してあげる。目に付くところにその書き出したものを貼っておく。
 きなかったことができるようになろうと努力するその姿を思い切り褒めてあげてください。 

 声のかけすぎがプレッシャーになる場合もあります。すごくまじめな子ですごくがんばっているのに成績が伸びないという時、がんばりがから回りしている時は、お母さんが「100%でなくても良いのよ」と言ってあげることも大切です。


                                                                     
c. 脳の発達の鍵はお母さん(2)

 
「先生、うちの子、いつもいつも成績が悪くて褒めようが無いんです。」 というお母さん、子供達に決まったお手伝いを責任を持ってさせていますか?
 そのお手伝いが最初は不完全でもまずやりとげられたら、思い切り褒めてあげてください。 お手伝いは、自発性を高めるために非常に有効です。
 食事の準備、食事前の配膳、食後のあと片付け、犬の散歩やえさやり、ゴミ捨てなどなど、家庭内の細々した仕事を「そんな仕事は自分の仕事じゃない。」とやろうとしない責任回避の姿勢は、自分で考えようとしない姿勢、つまり受身の姿勢を助長し脳の発達を妨げます。 
 最初は言われたことを言われたとおりにやるお手伝いでも、お母さんの褒め言葉で子供の意欲につながると、子供はお母さんが困っていると気付いたら自発的に助けてくれるようになりますし、どうすればお母さんが助かるかと言う事にも気付くことが増えていきます。 
 お母さんも、「何でも自分でできる。」 とがんばってしまわないで、「お母さん困っているから、助けて。」 と子供に言ってあげてください。子供は自分が役に立ったと思えるとき、自信と誇りを持ちます。 
 毎日のお手伝いは、目にはしていても普通なら気付かない部分に隠されたサインに気付くかどうか、そのサインに気付く力を養ってくれます。
 ノーベル賞をとった田中さんも失敗した実験結果を見ていて、他の人は気付かない点に気付いたから、ああいう大発見ができたんですよね。気付くべきことに気付くべきタイミングで気付くことの出来る力は、日常生活の中で、お手伝いで養われるのです。 
 自分より目上の人が何かしているのに気付いたら、さっとそばに行って手伝う姿勢は、社会人になって仕事を覚えるときの基本姿勢ですが、この基本姿勢も、日常的に家でのお手伝いをしていてこそ身につくものなのです。 

 また、お手伝いは、勉強における集中力を高めるのにも役立ちます。
 「ちょっと、、、」とお手伝いを頼もうとして、子供が勉強している姿を見て、頼むのをやめてしまうこと、よくありませんか?実は、頼んだ方が、子供の勉強の効率をあげるには良いのですよ。
 一人で机に向かって同じ事を30分以上続けることは、だらだらと集中力の持続しない勉強になりがちなのです。高い集中力で勉強するためには制限時間を決めて、30分で次の科目に移る勉強方法が大切。
「勉強しているからお手伝いできないよ」 という気持ちはだらだらした勉強方法を生み出しがちなのです。男の子女の子を問わずお手伝いをどんどんさせて、気持ちを切り替えさせ、集中力を高めさせることが大切です。ただし掃除ははまり込むと時間をとられるので掃除以外のお手伝いが良いのですが。 
 「洗濯をたたんでしまってちょうだい。」 「買い物してきたものを車から取ってきて。」 「買い物してきたものを冷蔵庫に入れてくれる?」 「食器洗い機の中のきれいな食器を戸棚にしまって。」 こういうちょっとしたお手伝いは集中力を高めるための気持ちの切り替えに有効なのです。 
 「子供に頼むより自分でやった方が早いし確実。」という気持ち、わかりますよ。でも、お手伝いを頼む時に「子供にとって必要な力をつけさせるため」と思って、できるだけ、自発性を高めるお手伝いをさせてみましょう。

 そして、お手伝いをした子供に「ありがとう、助かったわ。」と必ず笑顔で声をかけてあげて下さい。お母さんから言われた「ありがとう」は子供にとって、大きな意欲になるのです。


                                                 
d. 数学の勉強の仕方(1)

 
さて、では脳の発達を促すことにつながる勉強方法とは、具体的にどんなものでしょうか?  
 
 まず大切なことは集中力を高めること。例えば、お子さんが数学の文章題で一つの問題が分からなく、ていつまでも同じ問題を前にして考えていることはありませんか?これは集中している状態とは呼べません。数学では一つの問題に対して2分が集中力の限界です。2分を超えても解き方の方向性すら見えない場合は、それ以上考えても集中力が続きませんから、次の問題に移ったほうが良い。
 ただし、解けない問題でも、ノートに問題文を書き写すことは大切です。問題文を書き写す過程で、問題が求めていることが理解できる場合があるからです。まず、ノートに問題を書き写す。そしてどうやって解くのか考えてみる。2分考えても思いつかなければ、次の問題に移るのです。
 計算問題に関しても、時間を決めて短い時間内に集中して正解率を高めるトレーニングが、集中力をあげるのに効果的です。  

 また、高い集中力で問題に取り組める状態に脳があるのかどうかも重要です。睡眠不足は非常に脳の稼動効率を低くします。もし睡眠不足のまま「終わらないから」とだらだら勉強に取り組み続けているとしたら、この勉強方法は誤りです。夜はしっかり睡眠時間をとり、勉強内容ごとに、終了目標時間を決めて集中して取り組むことを第一優先に。
 
 高校生に見られがちなチャットをしながらの「ながら勉強」は、最も集中力を鈍らせる勉強の仕方です。勉強するときは勉強道具意外を身の回りに置かない。電話が掛かってきても出ない。決まった時間内で勉強を終わらせたら、その後は余暇の時間としてチャットやゲームを楽しむのも良いでしょう。しかし、勉強しながらコンピューターの画面をちらちら見ている状態は絶対にやめるべきです。

 さらに「毎日訓練する」ということも大切なことです。スポーツの練習と脳のトレーニングは同じなのです。スポーツで上達したい時に、週に1度だけ5時間練習して他の日は全く練習せずに上達しますか?毎日1時間ずつ週5日に分けて練習するのが当たり前ですよね。脳のトレーニングも筋肉のトレーニングと同じなのです。毎日30分、数学の問題に必ず取り組むことが大切です。
 記憶の固定曲線のグラフを見たことがありますか?縦軸を記憶固定の効率、横軸を情
報に触れてからの時間経過にしたグラフで、反比例のグラフとよく似ています。記憶は1日経つと大きく薄れ、4日目には殆ど忘れてしまい、約30日で完全に忘れてしまいます。
 ということは、塾や補習校で勉強したことをその翌週の授業日の直前まで全く宿題に取り組まずにいると、完全に授業で習った内容を忘れている状態で登校日前日に「難しい、わからない。」と言いながら宿題に取り組む羽目になるのです。
 授業を受けたその日のうちにまず最低15分でも取り組めば記憶は強化されます。その次の日にさらに最低15分取り組めば記憶は固定します。同じ時間をかけるのでも、習った直後に復習しつつ宿題に取り組むほうがずっと効率よく勉強できるのです。習った直後から毎日15分5日間合計1時間15分勉強するのと同じ効果を、習ってから5日後まで全く取り組まずに得るには3時間以上掛かります。時間がもったいないですね。
 
 塾や補習校の宿題を上手に利用して、効率よく勉強しましょう。
 

                                                    
e. 数学の勉強の仕方(2)

 現地校の数学の勉強の仕方にも、注意が必要です。アメリカの現地校の数学の授業には2つの問題点があります。 
 
 一つ目は、計算機を使うこと。計算力の低下は数学力の低下につながります。米国大学進学に必要な統一テスト・SATの数学では、米国人の平均点は800点満点中500点〜550点と言われていますが、育英セミナーで学ぶ、日本で中学3年まで過ごして渡米した日本人生徒は、英語で出題されているにもかかわらず、ほとんどが満点を取ります。日本で数学を学んだ日本人生徒がSAT数学で高得点出来る理由、それは、計算機を使わない数学の勉強方法が身についているからなのです。

 問題の二つ目は数学のノートのとり方を現地校では指導しないこと。カリフォルニアで現地校に通う生徒に数学を教えていて一番大変なのは、現地校の数学授業でノートのとり方を指導されないため、計算式を残さず答えだけをノートに書く悪い癖がついてしまっている子供たちに、問題を解く道筋が後からたどれるよう計算式をきちんと残す数学のノートの書き方を指導することです。ノートがきちんと残っていれば後でやり直しができますが、ノートが残っていないとその場限りの「答えが当たった・外れた」という勉強で終わってしまいます。 

 計算機を使わずに、ノートをきちんととる勉強の仕方を続けているかどうか、家庭学習において、お母さんの姿が見える場所で勉強させ、そのポイントをチェックすることは大切です。

 上で、「スポーツと同じように数学の勉強も毎日トレーニングすることが大切」と書きましたが、毎日子供がきちんと勉強するためには、長期的な目標と短期的な目標を明確にし、子ども自身に学習計画を立てさせることが重要です。自分でいつまでに、どれだけの量をやらなければならないかを考え計画だてることで、勉強に対する意識付けをさせるのです。

 その際に、一週間の自分の生活も表にして、自分の時間の使い方を省みることも大切です。長期的な学習計画が実現できるような時間の使い方をしているのかどうかを自分で考える力を養うことは、将来社会に出たときに、自分の任された仕事を時間内に間に合うよう完成させるための基礎力作りになります。計画を立てても、最初のうちは計画倒れになるかもしれません。しかし、まずは計画を立てる努力をしたことを根気強く評価してあげましょう。子供が学習計画を立てたときには、なるべくお父さんも一緒に計画の実行状況を確認してあげましょう。計画通りに進んでいるかどうかの毎日のチェックはお母さんでも、お父さんの週1回くらいのチェックがあると、子供はさらにきちんと計画をこなすようになります。

 実行状況チェック時の心構えは「必ず褒めてあげること」。出来ていないことをマイナス評価するよりは、出来ていることのプラス評価を心がけましょう。「両親が自分の状況を見ていてくれる」と思うと、子供は大きながんばりを見せますよ。
 

                                                  
4. 本物を見せる大切さ
a. 本物を見せるとは

 「本物を見せる」とは一流の仕事を見せる事です。 研究でも料理でも音楽でも、どんな分野でも、一流の仕事を見ると、子供は感激します。

 私は毎年5月にパサデナにあるNASAの研究所JPLのオープンハウスに子供たちを連れて行きますが、このオープンハウスツアーに参加した後の子供の学習意欲の高まりは毎年目を見張るものがあります。それまで、机上の勉強がどう実際に生きるのかがイメージできなかった子供が、研究所を見学する事で「あんなことができるようになるんだ」と感激するからなんです。

 音楽だってそうです。クラッシックでもジャズでもパンクでも一流の仕事は心の琴線に触れ、心を癒し、感激を与えます。私は音楽はそれなりに聴きますが、以前はチェロの演奏には特に興味がありませんでした。けれどOrange County Performing Art Center にチェロの巨匠ロストロポービッチが演奏に来た時に妻に連れられて聴きに行って、物凄く感激して以来、チェロの演奏を好んで聴くようになりました。 CDを探して聴いて演奏家の名前も覚えましたし、演奏家ごとの特徴も分かるようになりました。

 二流の仕事でも楽しめるのは、その分野をある程度知っている人です。「一流のあれに似ている」という風に一流を知っていれば二流の仕事でも楽しむ事が出来ます。けれど最初から二流の仕事を見てしまうと、「こんなものか」とその分野全体をつまらないものだと思ってしまいます。その分野をそれ以上自分から知ろうとすることは二度とないでしょう。

 子供は放って置くと自分の好きなものだけにしか触れません。子供に任せないで、親が、先生が、一流の物を選んで見せてあげる事、聴かせてあげる事、触れさせてあげる事が、子供の可能性を広げるためには、大切なことなのです。

 南カリフォルニアにはすばらしい本物に触れる機会がたくさんあります。以下は私が子供たちに意識して見せている、本物と出会える場所です。夏休みなどのご家族でのイベントの参考にしていただければと思います。

Los Angeles County Museum of Art (http://www.lacma.org)
 Japanese Pavilion では過去に棟方志功作品展や、高村光雲の彫刻「老猿」が展示された事も。展示作品について説明をしてくれるTourがほぼ毎日あり、Home Pageの Event Calendar でスケジュール確認が可能。常設展示の東洋美術品工芸品や生活工芸品、12月までの特別展Glass: Material Matters やLACMA をデザインしている建築家Renzo Pianoの改築計画の展示がお勧め。

Gamble House (http://www.gamblehouse.org)
 映画 Back to the Future でドクの家として撮影に使われたことで有名なこの家は、P&G社2代目社長の避寒地別荘として1908年にデザインされパサデナに建てられた。ステンドグラスや装飾彫刻、家具のデザイン等1900年代前半の生活工芸美術の粋を集めた素晴らしい場所。南カリフォルニア大学建築科が研究目的で管理保全をし、見学ツアーも行っている。

The Huntington Library (http://www.huntington.org)
 グーテンベルグの活版印刷による聖書やAudubon’s Birds of Americaという芸術としても素晴らしい鳥の細密画の超大型本など、世界に誇る貴重本のコレクションの展示と、世界中から集めた植物をテーマ別に見られる広大な植物園、絵画だけでなく彫刻、陶器、銀器、工芸家具も楽しめるアートギャラリーの他、最近出来たChildren’s Garden や Greenhouse は小学校低学年のお子さんから楽しめ、知的好奇心を刺激してくれる。ティールーム(要予約)での食事もテーブルマナーの良い練習になりそう。植物園は説明員の方の解説を聞きながら回るツアーに参加すると、さらに楽しく見る事が出来る。



                                                    
b. 本物を見るときの心構え

 一流の仕事を選んで見せる事の次に大切な事は、仕事のやり方、仕事の流儀に触れることです。

 小さい頃は一流の仕事を見ても仕事のやり方の素晴らしさにまでは考えが及ばないかもしれませんが、高校生、大学生になってから仕事のやり方の素晴らしさを知って「あ、そうか」と思えば良いのです。高校生、大学生になって気付く前の段階として、小さいころから繰り返し一流の仕事の結果生まれる素晴らしい作品に触れて作品を知っておくと、大きくなってから仕事をしている人の素晴らしさにちゃんと感激できるようになります。

 「当たり前の積み重ねが、素晴らしい仕事を生む事に繋がる」と言う言葉をただ言葉として聞いても、実感としてはわからないでしょう。一流の仕事の結果生まれる素晴らしい作品を繰り返し見ていて、その上で、その言葉を聞いた時に、言葉の重みがわかるのです。

 一流の仕事、一流の作品に繰り返し触れる事で、本物を見抜く力を身に付けられるようになります。つまり目利きになれるのです。様々なメディアを通して玉石混交の情報が飛び交う昨今、目利きになれる、つまり良いものをきちんと選ぶ力を身に付けることは大切です。テレビで言っていた事、インターネットで流れている情報が全てそのまま正しい事ではないという心構えの元、自分にとって本当に必要な質の高い情報をつかみ取れる力を身に付けるためにも、一流の仕事に触れる事は大切なのです。

 一流の仕事に触れさせるには、お金がかかりますが、そこはけして惜しんではいけない部分だと思います。

 もう一つ大切なのは、本物を見るときの心構えです。心構えがきちんとできてないと、本物を見のがす事になります。

 本物に接する時の心構えとは、一流の仕事に対して尊敬する気持ちをあらわす形があると意識する事です。
例えば服装。本物を見る時にはきちんとした服装で行くことは大切です。服装は心構えの表れなのです。

 僕たちは仕事上大学受験生の入試面接練習を行いますが、本番の前に一度は、本番事に来ていく服装で練習をさせます。面接という場は、目上の方に初めてお会いして、自分を評価して頂く場なのですから、相手に対する敬意を払っているということが相手に伝わるような服装を心がける事が大切です。スーツ/ワイシャツ/ネクタイ/靴/靴下、色も大切なんだということを子供たちに教えます。実際の面接を終えた受験生が「僕みたいにきちんとして来てる人他にいなかったよ」と報告してくる事もあります。でも、それでいいのです。ルーズな方にあわせる必要は全く無いのです。

 音楽会におじいちゃんがタキシードで聴きに来ている姿をみて、それがかっこいいんだ、と感じることの出来る感性を子供たちに持たせる事が大切です。

 服装に気をつけるようになると、子供は自然にその服装にふさわしいきちんとしたマナーを心がけるようになります。本物に接するときのマナーの大切さに気付く機会を子供に与えてあげましょう。絵を見に行く時も、尊敬をあらわす気持ちが大切。美術
館では他の鑑賞者が心行くまで美術品との対話を心の中で楽しめるよう、静かにする事は非常に大切です。

 心構えのその1は服装に気をつけることですが、その2は接する本物を十分に味わい つくせるような事前の勉強をすることです。事前に知っているのといないのとでは、本物を見た時の感激の大きさが全く違います。

 例えば僕は芸能人を全く知らないので、LA空港で偶然会ってもわからないし、感激しませんよね。芸能人に会って感激するのは、その人を知っているから本物に会えたと感激するんでしょう?同じ事ですよ。知っている事、は、感激を深める事。一流の仕事についても調べてから、見に行くと、感激は違います。

 探してみようとする意識を持って見ることも、大切です。

 美術館を訪れた時に、家族で「一つだけもらえるといわれたら、どれを一番欲しい?お父さんもお母さんも選ぶから、あなたも選びなさい。後でどこが良かったか、言い合いしようね。」すると子供は、その作品の良さを説明できるようになろうと一生懸
命観察します。見る力が養われるのです。

 音楽会でもどの曲が一番好きだったかを、後で話し合おうとあらかじめ約束して行くと、子供は一生懸命聴きますよ。



                                                  
5. 英語力を伸ばすには
a. 英語力を伸ばすには

 子供たちがアメリカに行くことが決まったときに、周りの誰もが口にする言葉。 「いいなあ、すぐに英語がぺらぺらになるね。」 教え子たちとのおしゃべりの中でよく話題になることです。子供たち自身も渡米当時のことを話すときによく「不思議だよねえ、自分でもそう思っていたものね、飛行機から降りた瞬間から英語をぺらぺらしゃべれるような気がしていたものね。降りてみて『あれ?しゃべれない。おかしいな?』ってびっくりしたっけ。」と大笑いしています。

 アメリカにただ来ただけでは英語は話せるようにはならないと気づいてからの英語習得のための子供たちの苦労は、一緒に暮らしているお母様方が一番ご存知のことでしょう。現地校に通い始めの頃は、いきなり難しい英語の洪水に放り込まれたようなもので、こんなにもわからない、と子供は無力感にとらわれがちです。本人が超えられる高さのハードルを用意して、自分に実力がついていると実感できるようにして英語力をつけていくことが大切です。

 子供自身ができるようになったと実感できる英語習得のステップとして、日本語で英語文法を学ぶことは非常に効果的です。現地校での難しいボキャブラリーの洪水とは異なり、基本的な理解できる範囲の語彙を利用して、文法の構造を習得していけるからです。特にできなかったことがどれだけできるようになったかが目に見えやすいプログラムを利用しての学習では、はっきりと子供のやる気が高まるのがわかります。

 英語力は、リスニング=聴解力、リーディング=読解力、グラマー=文法力、ライティング=論述力、スピーキング=表現力といったさまざまな力の複合的なものですが、11歳を超えた子供にとってはただ英語環境の中で自然に習得するだけでは、年齢相応に学ばなければならない学習内容習得のスピードに語学習得のスピードがついていきません。子供本人の目に見える形で実力をつけてあげるには、文法力の習得に力を入れることは非常に有効です。

 現地校での英語の勉強だけというお子さんにありがちなのは、スペリングが出来ない、動詞の過去形過去分詞形がわからない(teach の過去はteached じゃないの?という子もいます)、主語に合わせて動詞の使い分けが出来ない(He play the piano. が間違いだとわからない)、助動詞の使い方がおかしい(Can he be able to play the piano? が間違いだとわからない)、といった文法の誤りに気づかないまま数年立ってしまい、中学生になってからこれはまずい、と勉強を始めてもなかなか正しい文法を習得できないと言うパターンです。人の名前を一度間違って覚えてしまうと、その人の正しい名前を覚えなおそうとしてもなかなか難しいのと同じように、最初の英語の習い初めで間違いを繰り返し指摘されていれば、間違いを正すことは易しいのですが、間違いを指摘されないまま誤った文法での英語を数年使い続けた後で正しい英語を学びなおすのは、非常に困難です。文字を使っての学習が学びの中心となる小学生からは、耳から入って来る英語だけに頼った英語習得ではなく、必ず、正しいスペリングや正しい文法を、目で見える文字を使って学ぶことが大切です。

 環境が整っているなら、日本語を使って英語文法を学ぶことは、アメリカで学ぶ日本語が第一言語のお子さんにとって、英語習得の近道なのです。


                                                  
b. 英語エッセイを書けるようになるには 1)文法力

 米国大学四年制大学進学に必須のSATも、帰国子女枠大学入試において多くの大学で必須のTOEFLも、20分〜30分以内に与えられたテーマで英語でエッセイを書く必要があります。また現地校でも6年生以上の学年では様々な教科において英語でエッセイを書く課題が出されるようになります。

 英語でエッセイを書けるようになるためには1)文法力 2)語彙力3)論理的思考力 4)表現力が必要です。まずは文法力についてお話しします。

 エッセイを書く場合に特に注意の必要な文法は「時制と主語」。

 時制が明確で無い文章は、出来事の起こった順がわかりにくく、読み手を混乱させます。滞米が長い生徒でも、自分にとって第一言語で無い言葉で文章を書く場合は時制に注意を払わない場合が意外に多いのです。小学6年生以上の子供にとって第一言語が日本語か英語か判断しにくい場合、1日ずつ、それぞれの言語で日記を書かせてみると、時制の混乱が多く見られる方が第二言語、少ない方が第一言語と判断できる場合が有ります。両方の言語で同じ程度に混乱が見られる場合は要注意。バイリンガル(二言語どちらにおいても高度な思考が行える状態)ではなくセミリンガル(二言語のどちらを使っても思考がまとめられない状態)になりかけているサインです。早い段階で徹底的に時制に注意をさせ、読みやすい文章を書くための文法トレーニングが必要になります。

 動詞の過去形、過去分詞形を正確にスペルできるかどうか、一つの文章内で複数の時制を混ぜて文章を書いていないかどうか、同じパラグラフ内で複数の時制が不正確に混じってしまっていないか。基本中の基本でありながら、英語が苦手な子供はそこをないがしろにしていることに気付きません。

 もう一つ重要な文法のポイントは、同じパラグラフ(段落)内で主語がころころと入れ代わる文章や、主語が何なのか分かりにくい文章を書いていないかどうかです。

 子供が思いつくままに文章を書いた結果同じパラグラフ内で主語がどんどん変わっていき、「このHeはどの人物を指しているの?」と分からなくなる場合がよくあります。また、同じ人物/物事を主語にして複数の文章を続けて書いているはずなのに、同じ主語を指す言葉が、ここではIt 、ここではThey になる、といったように、読んでいて主語が何なのか分からなくなってしまう文章もよく目につきます。一つのパラグラフ内ではできるだけ一定人物または物事を主語に定めて書くように気をつける文法のトレーニングも、読みやすい文章を書くための基本として大切です。

 主語の単数複数に気を付けて、動詞もそれにあわせた正確な形で用いるトレーニングも主語の混乱を招かないために大切です。

 この時制に関連する文法や一定の主語で文章を書くのに必要な文法は、日本では中学2年生まででほとんどの部分を学習します。言い換えれば、時制や主語に十分な注意を払って文章を書く事が難しい生徒は、どんなに滞米が長くても、限られた語彙で文法構造のみに注意を集中させる日本式の中学2年生までの文法を徹底的に学習し直す事がとても重要なのです。


                                                   
c. 英語エッセイを書けるようになるには 2)語彙力

 語彙力をつけるにはまず英語読書量を増やす事、英語読書において辞書をこまめに引き、調べた単語は単語ノートに書き留めていつでも時間が有る時に見直せるようにする事、英語読書では音読をできるだけたくさんする事、日常の英語会話において、意味が分からない単語は相手にスペリングを教えてもらって、自分で辞書で調べて意味を確認する事などがあげられます。

 つねに辞書を持ち歩く事は、語彙力増強の基本中の基本です。辞書を調べ、意味を覚えるようにノートに書き留める事なくして語彙を増やせるのは小学4年生までの日常生活会話範囲のレベルまでです。

 「電子辞書でも良いですか?」とよく聞かれますが、中学生以上であれば、電子辞書で全く問題は有りません。現地学校での膨大な単語に対応するには電子辞書でなければスピードが追い付かない現実が有りますし、現代用語のアップデートにおいても、電子辞書のほうが、最新対応が充実しています。

 語彙を増やすための単語ノート作りですが、英語の単語の日本語の意味を調べても、お子さんによっては「日本語の意味が分からない」と言うケースもあります。日本語の意味を調べると同時に、英英辞典で英語での意味を調べたり、わからない英語単語の日本語の意味をさらに和英辞典で調べて、似た意味の別の英語表現にどのようなものがあるかを覚えると、より語彙力の基盤が固まります。
 
 単語ノートにおいて、一番大切な事、それは、スペリングを正確に覚える事です。そっくりなスペリングでも、一ケ所 a と e が違う、l と r が違うだけで意味の異なる単語になります。一度間違えて覚えると、その間違えた記憶を正しい記憶に矯正するのは、知らないものを覚える場合の数倍の努力が必要になります。

 いいかげんに取り組むのでは無く、最初から正しく覚えることが最小限の時間と努力で最大限の結果を生みます。子供にそれが出来ない場合の多くは、自分から「必要な事だから、必ずやろう」と思ってやるのではなく「無理矢理やらされている」という心構えで取り組んでいる時です。

 「英語ができるようになりたい?」と真剣に子供に問いかけてみて下さい。どの子供も「できないままで自分はいい」とは思っていないはずです。出来ない事を必ず苦にしています。けれど、どうすればできるようになるかがわからないのです。できるようになるために、なぜ、単語ノート作りという地道な作業が大切なのか、子供と話し合ってみて下さい。

 中学生以下の学年なら、地道な作業を毎日続けられるよう、作業が出来た日には褒めてあげて下さい。時々本人の作っている単語ノートを見せてもらいながら、「〜〜って意味も知っているの?偉いなあ」とさりげなく会話の中でほめるのも良いでしょう。出来ていない事を叱られると、子供はますます作業が苦になって行きます。出来ていない事を指摘して叱るのでは無く、出来ている事を褒めてあげて下さい。できていないことに目をつぶるのはお母さんとしては苦しいかもしれませんが、出来ている事に目を向けて褒める事が本人が自分から「必要な事だからやろう」という気持ちになるためにとても大切なのです。

                                                   
d. 英語エッセイを書けるようになるには 3 )論理的思考力と表現力

 良いエッセイを書けるように論理的思考力および表現力を高めるために必要な事はなんでしょうか?
 
 私は、「知識」 「自分で問を作る力」そして「知的好奇心」だと思います。この三つは、美味しい料理を作るのに必要なものに例える事が出来ます。

 知識が無い状態とは、論理的思考の前提となる材料を全く持たない状態です。最新の知識を持つ事は、料理で言えば新鮮な材料を手にする事です。

 しかし、知識がいくらあっても、自分で問を作る力がなければ、論述の基礎となる問題定義ができません。料理で言えば材料はあってもレシピが無いのと同じ状態です。

 さらに知的好奇心がなければ、自分の身近な出来事と定義した問題をつなげることができず、自分独自の視点から書く事が出来ません。他の人が書く文章となんら変わりのない、個性のない文章しか書く事が出来ないのです。料理で言えば材料とレシピがあっても、料理を美味しくしようとする意欲が無いのと同じなのです。

 美味しい料理を作るためには新鮮な材料と良いレシピと美味しい料理を食べてもらおうと言う意欲が必要なのと同じように、論理的思考力と表現力を発揮して良いエッセイを書くには、「知識」「自分で問を作る力」そして「知的好奇心」が必要なのです。
 
 ではこの3つをを身につけて、良いエッセイを書けるようになるためには、具体的に日々の勉強方法にどんな事を取り入れれば良いのでしょうか。

 一つめは、英語読書。文章を書く上でのお手本となる英語に触れる機会が少なければ、当然良い文章を生み出す事はできません。また、読む本が難しすぎては時間ばかりかかって身につきませんし、簡単過ぎても実力をつけるのに役立ちませんので、読む本のレベルも大切です。

 二つめは、英字新聞や英語ニュース雑誌の書写と書写文章に対する感想文作成。単純作業のように見えますが書写は英語でも日本語でも論理的思考力と表現力を高めるために非常に有効です。社会に向けて伝えたい事をわかってもらおうと発信された新聞の文章をなぞる事で、論理的に相手を納得させる方法を身につけられますし、良い表現をなぞる事で、自分自身の表現力も高まり、さらに新聞やニュース雑誌の書写は最新の知識を得るきっかけにもなります。また、毎日書写をする事で、綺麗な文字で英語を書くスピードもあげる事が出来ます。

 私は、高校生から英語エッセイを書く力を高めたい、と相談されると、「毎日25分時間を決めて、どれだけの分量の英文を書写できるかのトレーニングと、書写した英文中の未習ボキャブラリーの単語ノート作りを徹底的にやりなさい」と答えるようにしています。25分は大学入試統一試験であるSATのWriting試験制限時間です。だらだら書き写すのでは無く時間を意識して手を動かす練習が大切です。毎日練習、と言う所が、一番大切です。スポーツでも楽器でも毎日練習する事により力がつくのと同じに、勉強も毎日の積み重ねが一番大きな力になるのです。

                                                              
6. 理科・数学の勉強 
a. 日本語で理科・数学を勉強する意味

 ときどき「現地校の宿題に英語で対応するのに手一杯で、日本語での学習に時間を割く余裕がないのです」とお聞きする事があります。確かに渡米直後のお子さんの中には本人がさぼっているのでもなんでもなく、現地校の宿題をこなすだけで本当に手一杯という状況は実際にあるでしょう。

 しかし、日本語が第一言語の子供にとっては、日本語で学ぶ事は非常に大切なのです。曖昧にしか理解できない第二言語である英語で理科や数学を学ぶより、一旦、明確に理解できる日本語で知識を吸収し、それを英語に置き換えて学習する方が、しっかりと概念の把握ができ、効果の高い学習が可能だからです。

 また数学や理科だけでなく、言語学習においても、日本語で語彙を増やし文章を読んで理解できる範囲を広げた上で、その日本語に対応した英語を習得する方が、曖昧な理解のままの英語のみの学習で言語運用能力を高めようとするよりも力がつくのも、こちらで教えていて経験的に実感する事です。

 育英セミナーの卒業生の中には理系分野の学習を日本語で先取り学習したことにより、現地校で数学や理科において抜きん出た能力が有ることを認められ学校で特別に表彰される生徒もいます。日本式で高3範囲までの理科、数学をしっかり学習した生徒にとっては、SAT(米国大学入学統一試験)のSubject Test で数学理科分野において満点を取ることも十分可能です。ちなみに、数学理科分野全科目で満点を取ることは、 日本で言えばセンター入試の理科数学分野全科目で満点を取ることに匹敵する能力があるとアメリカ社会からは見られ、理系分野における超難関校に進学を考える生徒にしか実現できない離れ業を成し遂げたとみなされます。英語ではアメリカ人に当然かないませんが、理科数学を日本語で先取り学習できればその分野においては誰にも負けない自信につながるのです。

 気を付けなければ成らない点は、アメリカ式では微分積分、およびそれを使って学習する物理は大学での学習内容にあたるのですが、日本式では高校での学習内容にあたるため、日本の大学進学を考える高校生にとっては現地校での学習内容のみでは大学入学後の授業についていくのに不十分である点です。

 日米いずれに進学するのかまだ決められないという状況であれば、理数科目に関しては日本式で先取り学習をしておかなければ、日本に進学すると決めたときに大変な思いをする事になります。


                                                    
b. リバネス実験教室 

 2007年2月 19日(月)、育英セミナーアーバイン校では、日本の若手研究者達によって設立されたバイオ教育企業リバネスの実験教室を協催しました。実験教室当日の生き生きとした子供たちの様子を見ながら、やってよかったなあ〜と本当にうれしく思いました。

 私たちがリバネスの存在を知ったのは、教え子卒業生が日本でリバネス創業メンバーの一人と知り合いになり、彼がUCI に博士研究員として留学することが決まったときに、何かわからないことがあれば私達を頼るよう紹介してくれたことがきっかけでした。さらに科学の面白さを子供たちに伝えたいと考えて始まった彼らの会社の活動を紹介した NHK の「ビジネス未来人」という番組を見て、彼らの活動が実験教室に参加する子供たちにとっても実験教室を計画立て実際に行う大学院生たちにとっても大きな成長の場になっている会社の活動を目の当たりにして、育英セミナーの目指しているところとの共通点の多さに、これなら、一緒にやれる、と感じたからでした。

 今回の実験教室のテーマはDNA抽出実験。鮭の白子からエタノールや界面活性剤を使って DNA の抽出をするのですが、この抽出実験はリバネスメンバーが大学院の研究室で行った手法を基盤にして限られた器材で子供たちでも安全に行えるような手順を工夫されて作られています。

 さらにその実験を中心として、限られた時間内に子供たちに何を学び感じ取ってもらうのか、実験教室を行うスタッフが膨大な時間と労力を費やして考え話し合いアイデアを出し合って決めていく様子に驚き感動しました。今回の中高生対象の部では、「蝶の目は何色が見えているか」という実験教室講師が大学の研究室で実際に行っている研究を模擬体験しました。 DNA配列を調べることでアミノ酸配列が解析できそれを元にたんぱく質が特定できることを大学では研究にどのようにいかしているのかを理解できました。

 普段教室で知識として理科数学を教えている私たち教師の力だけでは感じ取らせることが難しい研究の現場の雰囲気を 90分という短い時間内に子供たちにわかってもらえるよう、実験内容とそれを軸にした講義の工夫ももちろん素晴らしかったのですが、実験教室の前日にスタッフと子供たちとの交流の場を作り、一緒に食事をしながら子供たちのさまざまな質問に答えてもらったり、実験教室の始まる前に、化学系研究者と生物系研究者それぞれの研究が如何に社会にとって大切かの討論バトルを子供たちの前で繰り広げ、話を聞いていた子供たちに「自分がどの研究に費用を寄付するかを決める仕事の人だったらどちらの研究にお金を出すか」を挙手してもらう形で研究の話を聞かせてもらったり、子供たちにとっては心から楽しみながら研究の世界の一端に触れる貴重な機会となりました。実験教室事前に調べ学習課題が出て、それに取り組んで参加した子供たちにとっても DNAに対する理解が深まるよい機会となりました。

 この実験教室に参加した子供たちの中には、滞米生活が長く日本語に対する苦手意識の強い子も何人かいましたが、実験教室の興味深さから、日本語であっても一生懸命参加し、家に帰ってからもその様子を一生懸命家族に日本語で話していたそうです。また、他の実験教室に参加した生徒も、日々の勉強に対して積極的に変わった様子が、はっきりと見て取れます。

 育英セミナーにとって初めてのリバネスに依頼しての活動、そしてリバネスにとっては初めての海外での実験教室ということで、開催の日まで緊張が続きましたが、結果として子供たちに還元されるものが非常に大きいということがわかりました。是非定期的に続けて行きたい活動です。

リバネスホームページ  http://www.leaveanest.com/

NHK『ビジネス未来人』リバネス紹介ホームページ
http://www.nhk.or.jp/miraijin/bangumi/0610/10_06/index.html

                                                              
7. 帰国時期を決めるのに大切なこと
a. Early Graduation

 現地校にお子さんを通わせている保護者の方から受ける質問の中に、
「帰国時期をどうやって決めたらよいでしょうか」というものがあります。
お子さんの状況や、家族のあり方に対するそれぞれのご家族の考え方に大きく左右されることですので、
一概には言えない難しい質問なのですが、考慮するべきポイントをいくつかあげてみます。

 まず、日本に帰国後、お子さんにとってはこちらで身につけた英語力が、おそらく最大の武器になるはずです。
となると、少しでも高い英語力を身につけてから日本に帰してあげることが大切なポイント。
社会人になるときに仕事に英語が生かせるような基礎ができてから、日本に帰してあげたいところです。

 現地高校を卒業してから大学受験で帰国できるなら、それがお子さんにとっては最も英語力を高められますし、
大学入試においても英語力が一番評価の対象となります。
帰国後のことを考えても、高校までの万遍なく全ての教科を一般生に混じって履修しなければ単位のとれない教育と異なり、
大学は専門に特化して単位をとることで卒業できる場ですし、その専門には英語が生かせる場合も多いので、
大学受験で帰国できるなら、それが一番良いでしょう。

 気をつけなければいけないのは、帰国子女枠大学入試では、
受験資格において高校卒業後の年数制限をおく大学もある点です。
一旦、米国の 4年制大学、あるいはコミュニティーカレッジに入学してから、
「やはり日本の大学に」と帰国子女枠で受験しようとして、その年数制限が問題となるケースが見られます。
全ての大学が制限をおいているわけではありませんが、受けられる大学の幅が狭まるのは事実です。
米国大学に在籍してから日本の大学を考えるのであれば、
お子さんの志望校はそういった年数制限を帰国子女枠入試においているかどうかをまず確かめてください。
在籍している米国大学からの日本への留学制度を利用することを視野に入れたり、
日本国内の一般生に混じっての3年次編入を受験できるかどうか、
受験資格と編入試験問題の内容を確かめたりすることも大切です。

 アメリカの高校は日本の高校と異なり、卒業に必要な単位さえ集めれば卒業証書を獲得できます。
日本式学年で高 2の 2学期以降での帰国を余儀なくされる場合は、
アメリカの高校を Early Graduation して大学受験に直接臨むのも一つの方法です。

 この方法の利点は一旦日本の高校の編入試験を受け、さらにもう一度大学受験をするという二重の負担を避けられる点。
さらに重大なのは、日本の高校卒業資格では、それまでの海外生活が長かったとしても、
帰国子女枠大学入試は受験できないケースが、特に国立大学に多く見られることです。
8 年生の終わりからEarly Graduation を考慮に入れて、サマースクールや高校外での単位取得方法を検討し、
必要単位を獲得してアメリカで高校卒業資格を取ってから帰国できれば、
帰国子女枠大学入試において受験できる大学の幅はぐっと広がります。

Early Graduation は学校区ごとに卒業必要単位や規定が異なり、
お子さんの大学での志望専門分野にも関係してきますので、
一人一人と個別に相談しなければEarly Graduation自体が可能かどうか、
またお子さんにとってそれが最良の方法かどうかの判断ができません。
残念ながら概説は無理ですので、Early Graduation の可能性について確認したいという方は、
各校カウンセラーまで、個別にご相談ください。


                                                 
b. 高校入試を目指しての帰国

 保護者の駐在期間の途切れ目にもよりますが、

A)現地校 9年生を終了しているため受験ぎりぎりの 1月後半に帰国するケース

B)現地校 9年生を終了せず帰国するため日本で中 3の 3学期を過ごして卒業見込み証明を受け取れるよう
12月末に帰国するケース

C)中 3の 2学期から日本の中学校に在籍するケース

の3つのパターンが多いようです。

 選択が可能であれば、ABCの順に望ましい帰国時期だと育英セミナーではお話しています。
日本の一般受験生徒の受験環境に混じる期間が短いほうが、
本人がカルチャーショックを受けて勉強する気を失ったり、
一般生徒と自分を比べて萎縮したりする可能性が低くなると考えられるからです。
特に中 3 の2 学期は内申書のつく最後の学期ですから、一般受験生徒は神経をとがらせていることも多く、
帰国生徒にとっては家庭科や音楽、体育など慣れない教科も含めて内申点がついてしまう苦しい期間にあたります。
 
 その一方で文化祭や体育祭など日本独特の行事もあり、そういった行事を通して日本の学校の良さを体験できる
可能性など良い面もありますが、 9月に転入して慣れたと思ったらすぐに高校受験を経て
クラスメートとばらばらになるという環境の変化を考えると、選択が可能であれば、
日本の中学に在籍せずとも直接高校受験ができると良いのでは、とお勧めしています。

 ただ、日本の中 3 に当たる現地校9 年生を終了していなければ中学卒業資格があると認めない高校も
多くありますので、その場合は日本の中学に編入せざるを得ません。
その点は受験予定の高校に個別に問い合わせが必要です。

                                                          
c. 高1 の2 学期編入を目指しての帰国

 この帰国時期の良い点は、現地校の学年の区切り目まで在籍でき、現地校生活を最後まで終えた達成感を持って
帰国できることと、英語力を伸ばす期間を半年近く延長できること。
 
 欠点は日本の高 1 の1 学期に在籍できないためにその期間の新入生交流行事に参加できないことと、
その期間の学習を何らかの形でキャッチアップする必要があることです。

 ただ、注意すべきは、高校受験に帰国生枠を設けている学校の中には、渋谷幕張、早稲田本庄、
慶応SFCのように、高1編入は行わない学校がいくつかある点です。
高 1編入試験がどの学校で行われているのか調べた上で、この時期を選ぶかどうかを判断する必要があるでしょう。

                                                             
d. 中1 または中2 の2 学期編入

 この時期を選ぶケースのほとんどは保護者の駐在期間がその時点で終了するため
家族全員で帰国する場合です。
5年を超える長期米国生活を経て帰国するケースでは、帰国生向けの編入試験を行う中高一貫校や大学付属校を
選ぶことにより帰国後一般生に混じっての高校受験や大学受験を避けることで、
ただでさえ逆カルチャーショックに直面する生徒の学習面での負担を少しでも減らすことができます。

 帰国生向け編入試験を行う中高一貫校の中でも、特に帰国生の比率が高い学校を選ぶことで、
日本の学校生活に対するカルチャーショックを抑えることができる場合や、
米国生活で身に付けた英語力をさらに伸ばせる場合もあるようです。

 帰国時期を決定するにあたっては、お子さんの適性を良く見た上で、
現地校重視型試験校(現地校の成績、活動報告、英語作文、面接)を選ぶか、
それとも英数国3教科(あるいは理社を含む 5 教科)型試験校を選ぶかの判断が必要なことと、
そして、英語力証明の重要性があげられます。

 帰国時に示す英語力証明として、 2級以上の英語検定合格や TOEFLがあります。
TOEFLは、受験する予定の学校が正式スコアの提出を義務付けていない限り、
育英セミナーが ETS と提携して年4 回行っているTOEFL 特別試験の成績表が英語力証明として有効です。


                                                 
8. 大学入試向け統一試験 SATについて
a. SATとは

Q1  SAT って何ですか?
 米国で学ぶ高校生が大学受験において自分の学力の客観評価材料として大学側に提出できる統一試験です。日本の大学の一般入試におけるセンター試験のようなものですが、日本とは異なり、自分の納得がいくまで何度でも受験することが可能です。
 SAT にはReasoning Test とSubject Test があります。Reasoning Test はMath / Reading / Writing の3 セクションそれぞれ800 点満点で合計2400 点満点の試験、Subject Test は自分の得意分野を大学での専門にあわせて選んで受験する各教科800 点満点の試験です。米国人高校生とまったく同じ条件での受験になりますので、英語が第二言語となる日本人生徒は受験に向けて綿密な学習計画が必要です。

Q2 受験日はいつですか?
 SAT は年に7 回(10 月/11 月/12 月/1 月/3 月または4 月/5 月/6 月)の受験のチャンスがあり、自分が希望する回数受験することができます。1 回の試験でReasoning Test とSubject Test のどちらか片方を選んで受験することになります。Subject Test は最大3 科目まで1 回の試験で受験が可能です。各月ごとのSAT の申込締切日はたいてい試験日の1 ヶ月前です。受験日や受験料および申し込み締切日情報はwww.collegeboard.com を開き、Register for the SAT をクリックすれば見ることができます。受験申込もホームページ上で可能です。申し込み締切日が試験日の1 ヶ月前だからといって申し込みを後回しにして締切日ぎりぎりに申し込みをすると、近くの会場がすでに満員のため、車で1 〜2 時間かけて行くような試験会場で到着するころにはへとへとになりながら受験という事態も起こり得ますので、早め早めに申し込みをしておきましょう。

Q3 いつごろから受験を始めるのが良いでしょうか?
 米国大学に向けての標準的な受験は 11年生の学年末となる 5月 6月および 12年生の 10月 11月 12月。日本の帰国子女枠大学入試に向けては同じ時期から受験を始めて 12年生の 6月まで受験し続ける場合が多いでしょう。これは米国大学の出願時期が遅くとも 12年生の 1月に終了するのに対して、日本の帰国子女枠大学入試の出願は高校卒業後の 4月入学に向けて早いところで高校卒業後の 8月上旬開始だからです。ただし、秋入学制度のある日本の大学に帰国子女枠で出願する場合は、出願締め切りが 3 月下旬から5 月下旬と学校ごとに異なりますので、12 年生の1 月または3 月までの試験の成績を提出することになります。

Q4 試験結果はどうやって大学に知らせるのですか?
 受験申し込み時に大学コードを入力して受験終了後試験結果が自分に発送されるのと同時に大学にも発送される方法もありますし、追加成績報告と言う形で受験数週間後に自分の成績を確認した上で大学に成績を発送する依頼をインターネット上からすることもできます。受験申し込み時の成績報告依頼は無料ですが、試験結果閲覧後の追加成績報告依頼は有料です。
 このSATの追加成績報告依頼ですが、 7 月下旬から 8 月中旬までCollege Board のコンピューターメインテナンスのためにコンピューターが2〜3週間シャットダウンとなるため、追加成績報告依頼ができなくなります。この秋から試験が始まる帰国子女枠大学受験生はくれぐれも 7 月上旬のうちに必要な成績報告依頼を済ませておくよう、気をつけてください。


                                                   
b. SAT Subject Test と PSATについて

Q1  SAT Subject Test は受けなくても良いと聞いたことがあるのですが?  
 SAT Subject Test には文学分野のLiterature, 社会分野の US History, World History, 数学分野のMath 1, Math2, 理科分野のBiology, Chemistry, Physics, そして各種外国語があります。
 UC(University of California) 各校に出願する場合は異なる分野から2 科目受験が出願に必須となっていますし、日本の帰国子女枠大学入試においても、慶應義塾大学や国際基督教大学を始めとするいくつかの大学で出願に必須となっています。これらの大学を受験しないのであれば、受けないと判断することも可能でしょうが、あまり早い時期から自分が受験する大学の幅を狭めることは育英セミナーではお勧めしていません。

Q2 日本の大学受験の場合は SAT Subject Testの教科指定があると聞いたのですが?
 国際基督教大学は出願書類に「三つの異なる分野からの SAT Subject Test の成績」を必須にしていますので、受験科目が同じ分野に集中しないように注意が必要です。
 また、出願書類に 3科目の SAT Subject Test の成績を必要とする慶応義塾大学は、理工学部の出願に Math2, Chemistry, Physics が必須、経済学部および商学部の出願に Math2 が必須となっています。慶応理工、慶応商、慶応経済はSAT Subject Test の点数の高低も合否に関係があると見られます。Math 2, Physics, Chemistry で確実に点数が取れるよう、現地校の受講科目選択の工夫や試験準備をしっかり行いましょう。

Q3  SAT Subject test の Japaneseを受験すると有利と聞いたのですが?
 Subject Test の中でも、年に1 度11 月にだけ行われるJapanese は日本の小学6 年生程度の日本語力があり十分な英語の聴解力がある生徒であれば、米国大学出願において有利な材料になります。UC 各校への出願希望者が高校在籍中に満たさなければならない外国語学習は、このJapanese 試験で510 点以上取れれば外国語学習2 年分の実力、570 点以上取れれば3 年分の実力と認められ、現地校で外国語を受講せずとも出願資格の外国語項目を満たしたことになります。
 ただし、日本の帰国子女枠大学入試に対しては、あまり大きな意味を持ちません。
 試験当日は受験に必須のリスニング機材を忘れず持参しましょう。充電も忘れずに。

Q4  SATの外に PSATというものもあると聞いたのですが、それは何ですか?
 現地校が始まってすぐの 9月頭に現地校で申し込みをして 10月中旬〜下旬の土曜日に自分が通っている現地校を試験会場にして受験できる SAT模擬試験のようなもので、本番 SAT を受験するにはまだ早い 11年生以下の生徒が受験します。本番を受験する前に自分の学力を把握するために利用します。また、本番 SAT を行うCollege Board が統括している試験なので、この試験の成績の良い生徒に対して「わが校を受験してほしい」と米国大学がリクルートするのに利用される場合もあります。点数の高さによっては米国大学から奨学金を提示される場合もありますので、高得点の見込める米国大学進学予定者は受験したほうが良いでしょう。
 日本の大学に進学予定の場合は、特に受験する必要はありませんが、米国大学から奨学金を提示された事実は、日本の大学への出願時に、自分の能力を示す特記事項として出願書類に記載ができます。高得点が見込めるなら、日本の大学への出願しか考えていない場合でも、受験しておくと良いでしょう。

Q5 あまり早く SATを受け始めるのはよくない、と聞いたのですが。
 かつては、 SAT は 4回以上受験すると最も良い成績ではなく全ての成績の平均点を UCへの出願点数と見るため、計画立てて 3回以内の受験にするように、と言われていました。しかし、現在ではその規定は取り払われていますので何回受験しても出願点数に悪い影響を与えることはありません。ただ、生徒の住所・氏名・生年月日・在籍高校・ Social Security Number などの情報で同一受験者と確定された全ての試験成績が、SAT の成績表に載ることになりますので、大学側が過去の全ての受験成績を目にすることは頭に入れておきましょう。また「SAT の成績に有効期限があるから早く受け始めるのは良くないと言われた」と相談を受けたことがありますが、SAT の成績は、高校卒業後2 年以内の米国大学入学に対して有効です。高校在籍中にSAT の成績の有効期限が切れることはありません。

Q6 そのほかに、何か注意点はありますか?
 SAT を受験していれば成績を提出するよう指定している日本の大学に出願する場合、 SATを受験してみて成績が良くなければ受験しなかったことにして SATの成績送付手続きをしないでおこう、というケースもあります。高校によっては、大学に提出する現地校の成績表に SAT スコアが記載されている場合もありますので、自分の現地校の成績表をしっかり確認してから、そういう判断をしてくださいね。

                                                              
9. ボランティアをしよう
a. ファンドレイズウォーク

生徒たちの話を聞いていると、ボランティアの盛んなアメリカ社会では、小さい頃から様々な形で自分たちの地域社会のためにできるボランティア活動を行う機会に恵まれるようですね。 中でも「そういう活動は日本では出会ったことが無かったなあ」と感心したのは、現地校でのファンドレイズイベント。 学校で自分たちの参加している活動の資金を自分たちで獲得するために、クッキーやチョコレートやクリスマスギフトラッピングを売ったり、週末にカーウォッシュイベントを行ったり、中には、大人たちが楽しめるビンゴやブリッジ大会などイベントを企画してファンドレイズするケースもあるようです。日本では、PTAのバザーという形で親が行うことはあっても、子ども自身が自分たちの活動のために資金集めを行う話は、私はあまり聞いたことがありませんでした。ファンドレイズイベントは、自分の活動に対して自分で資金を集めることによって、その活動への参加の真剣さも増し、お金の大切さも実感できる良い機会ではないでしょうか。  

私が一番驚いたのは、学校でファンドレイズウォーク(ファンドレーズスイム・ファンドレーズマラソン)の日があって、「自分がどれだけ歩いたか(泳いだか・走ったか)」によって、スポンサーからその自分の努力に対して、学校や寄付を集めている団体にお金が支払われるという話です。あらかじめ目標設定をして、「これだけ歩く(泳ぐ・走る)ことを約束するので、その自分の努力に対して、これだけの寄付をお願いします。」という約束をスポンサーとなってくれる人々と交わし、当日は途中で投げ出さずに最後まで約束を果たすと聞いて、日本にはない発想を新鮮に感じました。自分の努力をあらかじめ表明しそれを責任もって果たすことといい、自分が大切だと思うことに対して寄付をお願いする行為といい、子供の自立に必要なことだと思います。ファンドレイズウォーク(スイム・マラソン)を終えて「今日はきつかった〜、でもこれだけ寄付できたんだよ!」と話してくれるときの、達成感で満たされている子供の表情は格別です。  

このファンドレイズウォークは、学校で行われるものだけでなく、大人になってからも、様々な形で参加の機会があります。高校生にとっても、アメリカ社会に触れつつ友達と一緒にボランティア活動に参加できるよい機会になるのではないでしょうか? ファンドレイズウォークイベントは、寄付を集めなくてもイベントに一緒に参加して歩くことも可能な場合があります。ウォークのコースの沿道には、イベントの趣旨に沿った様々な言葉が掲示されたり、バンド演奏などの様々な催しがあるようです。当日、イベントを覗いて見るのも、アメリカ社会に触れる良い機会になるでしょう。 でも、勇気を出して、自分なりの目標設定をし、寄付を周りの人々に頼んで見るのも、良い経験になるかもしれませんよ。自分の努力は自分が一番良く知っている、それを実感できるのも、ファンドレイズウォークの良いところではないでしょうか。


                                                  
10. 失敗から学ぶ
a. 今、間違えたことを喜ぼう

育英セミナーの先生たちが、授業中の小テストで子供が失敗したときに言う言葉です。
「良かったね〜。失敗したのが、今で。」
初めて聞く子供の中には「失敗したのに怒らないの?」とびっくりする子供もいます。
「今、失敗したってことは、今、そこができないって、分かったってことでしょう?
できないってことが分かった今日から、できるようになる努力をしたら良いんだよ。」
すると子供は、ほっとした顔をした後、「よし!がんばる!」という決意のある顔に変わります。

次の小テストのときにちゃんとできる様になった時、「先生!!できたよ!!」と本当に嬉しそうな顔をします。
教える仕事をしていて、一番嬉しい瞬間です。
子供が学校のテストで悪い点を取ったとき、どんな言葉をかけていますか?

育英セミナーに勉強をしに来たばかりの子供の中には、「できない」ということを隠そうとする子供がいます。
先生が机を巡回するときに、自分のノートが先生から見えないよう隠したり、
テストの時に薄い文字や小さな文字で書いて忙しい先生が判読しにくいときに良いほうに解釈してくれるのを期待したり。
無意識にそうしている子もいます。
子供のそういう行動を見ると、今まで、失敗するたびに
「どうしてこれができないの」と怒られてばかりいたのかもしれない・・・と感じます。
あるいはテストの成績が良いことでしか親に褒められないと思いこんでいるのかも、
成績でしか自分を評価できない心理状態なのかも・・・と思います。

失敗にも様々な種類があります。
分かっているはずなのに、うっかりやってしまう失敗。
本質が理解できていなくて、正解にたどり着けずにやってしまう失敗。
練習のときにする失敗。本番のときにする失敗。などなど。
大切なのは、本番で失敗しないようにすることです。

本番で失敗しないようにするためには、練習のときにした失敗が、本質が理解できていないための失敗なのか、
分かっているはずなのに起こってしまった失敗なのかを見分けることが大切です。
けれど、子供が失敗を隠してしまったら、せっかくの見分けるチャンスを失ってしまいます。
目の前の子供が大人から失敗を隠そうとしていないか?とよく観察することはとても大切です。
子供が失敗を隠そうとしているのを見つけたら、
「子供がやましい気持ちを持ちながらそういう行動をしなければならないほど、子供の気持ちを追い詰めてきたのか・・・」
と大人が反省することが大切です。
失敗した事実を叱るのではなく、点数が低いことを叱るのではなく、失敗から学ぶ姿勢を育てる声掛け、
失敗から向上しようとする努力を認める声掛けが大切です。
点数が良いこと以外褒めない、というのも、努力を認める声掛けになっていません。
点数が良いことの他にも、子供の良いところを見つけて、常に言葉にして褒めたり、
「ありがとう」と声を掛けたりすることが大切です。

子供のやっている失敗が、本質的に理解できていないための失敗なのか、
分かっているはずなのにうっかりやってしまっている失敗なのかを見分けるために大切なこと。
それは、きちんとノートをとることです。ノートが残っていなければ、どこで失敗しているのかを確かめることができません。
現地校では、特に算数・数学に関して、ほとんどの場合ノートのとり方について指導し、
その通りにノートをとっているかどうかを細かくチェックされることは無いため、
頭の中でパパパパっと考えて、答えだけをノートに書く癖が付いてしまっている場合が多いようです。
自分がどういう思考経路で、その答えにたどり着いたのか、記録を残し、失敗したときに、その記録をたどりなおして、
どこで間違えたかを見直しする癖を、算数・数学の文章題を利用して、きちんと身に付けさせることが大切です。

                                                             
b.ノートをとる大切さ

「分かっているのに、答えがあっているのに、どうしてわざわざ書かないといけないの?」
と子供が面倒がってきちんとノートをとろうとしない場合もあるでしょう。
ノートをとることの大切さを子供に分かるように話してあげる必要があります。

育英セミナーでは、ノートをとろうとしない子供に、繰り返し
「大人になって仕事をするときに、ノートをきちんと残す癖がついていないと、自分の仕事に責任がもてなくなるんだよ。」
という話をします。

飛行機事故が起こったら、「あの事故の原因をはっきりさせて、同じ原因の事故が他の飛行機でも起こらないように
するためには、仕事の記録がきちんと残っていることが大切なんだよ。今、授業でノートを丁寧にとるのは、
大人になって仕事をするときにも丁寧に記録を残せるよう、
今から丁寧に記録を残す癖がつくよう、練習しているんだよ。」と話します。

家電製品から出火する事故が起こっても「大人になって、自分が開発した商品が世に出て10年たってから
その商品にクレームがついたときに、10年遡って仕事の記録を調べられるよう、
丁寧な記録を残すことが大切なんだよ。
同じように、自分の勉強のノートを見直してミスを見つけ出す癖をつけることが、将来、人を事故に巻き込まないように、
安全な仕事をできる人になるためには大切なんだよ。自分の仕事が事故の原因にならないようにすることは、
つまり、自分自身を守ることにもなるんだよ。自分がいい加減なことをして、人を事故に巻き込まないように、
今からトレーニングしてるんだよ。」と話します。

また、「大人になったらゲーム開発の仕事をするんだ」という子供がいれば、
コンピュータープログラムの仕事を例に上げて話します。
「今の仕事は、何か特別な伝統芸能の職人さんでもない限り、仕事の最初から最後まで自分一人だけでできるものは
ほとんどないでしょう。たいていの仕事はチームで行うでしょう。コンピュータープログラムの仕事だったら、
プログラムファイルが何百冊にもなるものもあるよ。誰が見ても、その部分を作った人が何を考えてそうしたのか、
一目で分かる記録があれば、エラーが起こっても、すぐに対処できるはずだよ。自分が何を考えてそうしたのかが、
他人が見てもわかるよう、記録を残すことが、大切なんだよ。今の授業のノートも、後で見直しをしたときにも、
どういう風に考えて問題を解いたかがちゃんと分かるように、記録を残すことが大切なんだよ。」

人に分かるようにノートを書くことは、自分の考えを練る事にもつながります。
世界中のいろいろな人とコミュニケーションが必要となるこれからの仕事には、
自分の考えを文章で分かりやすく人に伝えることもとても大切です。誰が読んだとしてもわかるように、
自分の考えを明確にするためには、丁寧にノートを書くことが最も良いトレーニングです。
自分の頭の中だけにあって文章化されていない考えは、本当に辻褄が合っているか、
論理的に正しいかどうかを検証することはできませんし、考えに見落としがあるかもしれません。
誰が読んでも理解できるようにノートに書き出してみて、初めて検証が可能なのです。

また、ノートを書くことは、新しいアイデアを作り出す上でも大切なことです。
今目の前にある条件を書き出して、さらに頭の中の考えを書き出して見比べることで、すでに存在するものの間にある、
大切でかつ見落とされているものを見つけ出すことができるのです。ペンを動かしながら考える癖をつけると、
ふとよぎった新しいアイデアも、書き留めることができます。ペンを動かさずに頭の中だけでくるくる考えるのではなく、
考えながらその考えの断片を文字にするよう、必ずペンを動かす癖をつける上でも、
ノートをきちんととる習慣は大切なのです。

このような、大人になって仕事をするときに丁寧にノートをとる癖がついていることの大切さを、
折に触れて子供に繰り返し聞かせることで、だんだんと子供も「あ、ノートをとらなければ」と気づくべきときに
気づくようになっていきます。癖をつけさせるというのは、一朝一夕には難しいことですが、
長い目で見て、根気強く言い聞かせることが、大切なのです。

                                                             
c.うっかりミスをなくすには

「失敗しても反省しているそぶりが見られないんです」と言う声を聞くことがあります。

細かいことを気にしない性格の小学校高学年以上の男の子に多いパターンですね。
そういう時、子供は気にしているけれど気にしていないそぶりをしているだけです。
心の中では必ず「しまった」と思っています。そういうときに大切なのは、失敗した事実を責めるのではなく、
次に失敗しないようどうしなければいけないのかを、冷静に落ち着いた態度で話し合い、
子供本人にどうすればよいのかを考えさせることです。
子供に自分で考えさせる時間を与えず、どうすれば良いのかやるべきことを子供が考える前に大人が指示してしまっては、
子供にとってはやらされ仕事になってしまい、真剣には取り組みません。
自分で創意工夫すること。失敗から学ぶときに最も大切なことです。

「やり方はわかってる、ただ、計算ミスしただけだから」と、自分のうっかりミスを軽んじているときも、要注意です。
自分のミスを軽んじる癖が染み付いてしまうと、その計算ミスをなくすことが、とても難しくなってしまいます。
単なる計算ミスであっても、間違いは間違い。できなかったという事実は事実です。
やり方がわかっていたとしても、できなかったことに変わりはない、ときちんと言い聞かせることが大切です。
当たり前の最も簡単に見えることを、おろそかにせずにきちんとこなせるかどうか。
その細部にこだわる人でなければ、信頼される仕事のできる大人になることは難しいということを、
丁寧に言い聞かせることが大切です。

うっかりミスをする子は、頭の良い子が多い。
頭が良いから、一気に大量に 1日にまとめてやってもこなせてしまうことに気づくと、
毎日少しずつやるのではなく、まとめて一気にやる方が、効率が良いと思ってしまいます。
しかし、多い分量を早く終わらせようとするため、丁寧な見直しをしなくなってしまい、うっかりミスが増えてしまうのです。
また、頭の良い子は、良くできるために標準量より沢山こなすことや、少し難しいものをこなすことを
周りから求められることもあります。
そのため大量の課題を早く終わらせることに気がとられて、丁寧さをおろそかにしてしまうわけです。

子供の宿題の仕方が丁寧さに欠けているしうっかりミスが多い、と気づいたら、すぐ注意することが大切です。
そばにいる大人が「やらなければならない量が多いから、この程度の雑さでも、しょうがないか」と妥協してしまっては、
子供はすぐその空気を読み取って、「少々雑でも問題ないんだ」と侮り、
見過ごせないレベルにまで雑にこなすことが癖になってしまいます。
癖になってしまってからそれを改めるのは、本当に大変です。癖になってしまわない前に、
周りの大人がきちんと目を配り、注意すべきタイミングで、簡潔に注意することが大切です。

この、子供を注意するときに気をつけなければならないことは、
ミスが見つかった瞬間にその目の前のミスだけを注意することです。
けっして、「あなたはいつもいつもそういうことをする」と過去に遡って怒らないことです。
子供の耳には、褒める言葉の聞こえる重さが 1 だとしたら、冷静に叱る言葉はその 3 倍に強く重く聞こえます。
さらに感情的に怒る言葉は10 の強さに聞こえます。目の前のミスに対してだけでも強く叱られていると感じるのに、
過去のことまで持ち出されて怒られては、言葉が強すぎて子供は受け止めきれなくなってしまいます。
受け止めきれなくなるとどうなるか。叱る言葉が、聞こえなくなるのです。
耳には届いていても心に届かなくなるのです。
ニューステレビの音が大きすぎるとニュースの内容が頭に入らずに、
ただうるさいということだけしか分からなくなってしまうのと同じです。
子供にとって大切なことが含まれている言葉なのに、子供を心配して言っている言葉なのに、
子供が受け止め切れなくて聞こえなくなってしまっては、言っている側にとっても大きな損失です。

うるさいと思わせないように本当に必要なことを伝えるには、
叱る言葉は 3倍、怒る言葉は 10倍重く聞こえることを、叱る大人はよく覚えておく必要があるでしょう。

                                                             
d.失敗して青ざめている子どもへの接し方

私自身の経験になりますが、それまで得意だった算数・数学が、中学生範囲の図形になったとたん、
学校の授業を聞いているだけでは分からなくなってしまいました。
それまでは、学校の授業範囲の理解度を確認するテストで70点未満をとったことはなかったのですが、
数学の中間試験で40点を取ったのです。答案を返されたときに、目を疑いました。
しかも、授業でテスト範囲の見直しをしたときに、なにが間違っているのかの説明が、全くわからなかったのです。

家に帰って、ショックを受けたまま、答案を母に見せました。母は叱りませんでした。
その代わりに、3〜4日して、「これを使って勉強してみる?」と、
ほぼ毎日30分勉強するタイプの書き込み式月刊教材を私に差し出しました。
その日から毎日、その教材を使って30分図形の勉強をしました。
6週間後の期末試験で、図形分野の試験がもう一度ありました。
返却された答案に98点と書かれているのを見たときは、泣きそうなほど嬉しかったです。
帰宅して再び母に見せると、母は、「よくがんばったね、偉かったね。」と喜んでくれました。
母が喜んでくれたのは点数を取れたことに対してではなく、私が努力を途中で放り出さなかったことに対してだ、
と言うことが、そのときの私には、わかりました。

あの40点と言う答案を受け取ったときのショックは今でもはっきりと覚えていますが、それ以上に、
母が叱らなかったこと、具体的な解決方法を私に与えてくれたこと、
その方法に従って努力した私が、最後まであきらめなかったことを褒めてくれたことのほうが、
ずっと大きく私の心に残りました。「お母さんは必ず味方してくれる」と言う確信がもてるようになりました。
それは、その後、私が青ざめるような決定的な失敗や困難に直面するたびに、私の心の支えになったように思います。
失敗しても、耐えて努力を続ければ取り戻すことができる、と言う経験は、私に、失敗を恐れない強さを与えてくれました。

子どもが青ざめるような失敗に直面しているときこそ、親の信頼が子どもを支えます。
おそらく私の母も、答案を見たとき動揺したと思うのです。
でもその動揺を私には全く見せないでいてくれたことも、私には救いでした。
「お母さんはどんな私でも受け入れてくれる」という安心感があったからこそ、
自暴自棄にならずに最後まで努力を続けられたのだと思います。
また、6週間後の期末試験までの間、一度も「ちゃんと勉強しているの?」とか「もっと頑張らないと」といったことは
言わずにいてくれました。
私が自分で決めて自分で進めていく最中は、信頼して私のペースに任せていてくれたことも、ありがたかったです。
「勉強の進み具合はどう?」と聞かれても、試験前の私の状態では、
客観的に判断して説明することはできなかったと思うのです。
その質問に答えようとすることで、かえって焦ったり「このやり方で本当に良いのだろうか」と迷ったりして、
実際に勉強する時間とエネルギーを、無駄に焦りや迷いに費やしてしまったかもしれません。

子どもが青ざめるような失敗に直面しているときには、
まず、「どんな状態のあなたでも、私たち家族にとって大切な存在」と子どもを受け入れてあげてください。
そして、具体的な解決方法を、子どもと一緒に、考えてあげましょう。
また、前に進もうとする子どもの力を信じて、努力しているのかどうかを必要以上には聞かずに、
じっと見守ってあげてください。
大人の基準から考えたら、とても努力が足りないように見える場合もありますが、
本人が自分で考えたペースで成功することが大切なのです。
本人のペースに任せていて、失敗したとしても、そこからまた、成功体験を積み重ねるために、どうすれば良いか、
一緒に話し合って進んで行けばよいのです。一度は失敗することも、成功の喜びをかみしめるためには大切なことです。
成功するまで何度も挑戦し続ける限り、失敗に終わってしまうことはありません。
失敗しても、そこから立ち上がって挑戦し続けるサイクルに子どもが入っていくためには、
親の信頼が一番の心の支えなのです。

                                                        
e. 子どもの失敗を受け止めよう

今まで4回にわたって、失敗したときに、子どもがその失敗から学び次に成功するためには、
大人はその子どもの失敗にどう対処するべきか、をお話してきました。
その4回でお話したことに共通している点は、子どもの失敗を頭ごなしに叱るのではなく、
一緒にその失敗を受け止めて、落ち着いて対処方法を一緒に考えてあげましょうということだったと思います。

最近子どもと接していて時々気になるのは、自分が失敗することをいやがる子どもがいることです。
失敗しないように、最初から正解を欲しがり、その正解どおりにやろうとするのです。
マニュアルを欲しがる、と言うのでしょうか。どうすれば良いのか、自分で考えようとしない。

そういう時に私達が子どもたちに言うのは
「今は答えがある問題にしか直面していないからそれで良いかもしれないけれど、
社会に出たら、たった一つの正解なんて無い問題にいくつもいくつも取り組まないといけないよ。
今から自分の頭で考える練習をしなければ、
正解の無い問題に取り組める大人になる練習を積むことができないじゃない。

今まで世の中を変えるような仕事をした人たちは、
一つも失敗せずに最初からその仕事で成功したわけではないよ。
成功する前に、何度も何度も失敗して、
でもその失敗を見つめて、耐えて、考えて、繰り返し方法を変えてやってみて、
成功にたどり着いたはずだよ。科学の世界では1000分の3、千回やって三回成功すれば上出来。
失敗から学んでこそ、成功を得られるんだよ。失敗を重ねた末に得られた成功は、喜びが大きいんだよ。」

失敗することを嫌がる子どもは、
失敗から学ぶせっかくのチャンスをふいにしてしまっていることに気づいていません。
気づかせるためには、子どもが失敗したときに、周りの大人がその失敗を咎めるのではなく、
失敗を見つめてそこから学ぶこと、失敗を自分の人生の肥やしにすることを、支えてあげる必要があります。

失敗を恐れない前向きな態度を育てるには、周りの大人が失敗を叱るのではなく、落ち着いた温かい態度で、
なぜ失敗したかを子どもと一緒に分析し、
次に失敗しないための具体的な対策を子どもと一緒に考えてあげましょう。
そして、失敗を見つめることが将来の自分にどう大切かを、歴史上の人物や有名人の例を挙げて伝えることで
子どもの視野を広げてあげましょう。

例えば、ペニシリンの発見も、細菌の培地に誤ってカビを生やしてしまったことを、
普通の人なら「あーあー、失敗した。やりなおそう。」といって、
失敗した培地を良く観察もせずに、捨ててしまうところを、
失敗した培地のカビを良く見て、細菌の生えていたところの周りが、
カビによって透明になっていた(細菌が死んでいた)
ことに気づいたことが、大発見につながったわけです。

そういう例は、他にもたくさんあります。NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」と言う番組も、
現在高い評価を受けている仕事を実現している人々が、
過去の失敗にどのように向き合ってきたかを見せてくれる番組です。
こういう物を子どもと一緒に見ることも、子どもの失敗に向き合う力を養ってくれるでしょう。

最後に、失敗に強い子どもに育てるために最も大切なこと、
それは、自分の失敗を見つめてそれを成功につなげようとしている子どもの努力を褒めてあげることです。
失敗に対して無気力な子どもに多いのは
「どんなに努力しても親は絶対褒めてくれない」と思い込んでいるように
感じられます。親の褒める言葉は、子どもに大きな大きな力を与えてくれるのです。
そのパワーは親だけが持っているパワーです。
是非、お子さんのよいところを見つけて、たくさん褒めてあげてください。


                                                             
Last updated on Jan 29, 2008
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